建築家である吉眞孝司さんのお書きになった後半部分の2回目です。


 

前回同様、小松邸が実例として登場します。依頼主の小松さんは、長い間老人介護に携わってきた方で特養の施設長をされています。 その経験をもとにしているのでしょう。きわめて実務的で参考にできることが多いと感じます。


 

 





介護と建築のプロが考えた「生活リハビリ」住宅―バリアフリーは間違っている



  • 作者: 三好 春樹

  • 出版社/メーカー: 雲母書房

  • 発売日: 2005/05/01

  • メディア: 単行本






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 ■安全で、健常者も足を伸ばせるお風呂





 


三好さんが奨励する風呂はあまりにも小さくて質素な浴槽だったので、それにも驚きました。 しかしとても安定性はよくゾロリと滑ることもないので障害者のいる家ではとても使い勝手が良いと思います。




狭いお式と風呂で溺れることはない。 せいぜい心臓麻痺になるぐらいで、水を飲んで死ぬことはありえないのです。




浴槽に入るためのポータブルの電動吊り上げ装置がありますが、これは結構事故があってお勧めできません。


 


三好さんに教わったのは、将来体のどちら側に麻痺が来ても浴槽に入れるようにその両サイドに触れるエプロン 作り付けにするということです まずは浴槽そのものではなくその外に入浴のための工夫をするのです。







エプロンとは浴槽の天端(浴槽の縁の高さ)と同じ高さで腰掛けるスペースのことです。 全く同じ高さにすると エプロンから浴槽にお湯が逆流するのでそれを防ぐために一段低くします。


 




この浴槽には画期的なアイデアがあります 三好さんが勧めるタイプの浴槽は、普通のおっさんが手で握れるように5〜6 CM は望ましいということになっていますが、これはもう一歩進めてこっちの断面を半円にしてあります(中央の図、円で囲んだ部分)




この形状だと必要な場合は指先まで力を入れて握ることができる。


エプロンを一段下げることで逆流防止にもなっていますが、手で縁を握れるようにスペースを取る意味もあります。


 


但し健常者も小さい浴槽で満足できるかと言うと、やっぱり足を伸ばしたいと思うでしょう。 そこで小松さん(元特養施設長の施主)に アドバイスを頂き、大きめの浴槽の中に間仕切りを入れて、調整できるようにしました。


 


 


 


 






 ◆メガネサル

このお風呂の問題は、縦方向の手すりが少ないことでしょう。特に浴槽から自力で立ち上がるには、横方向の手すりだけでは困難です。縦方向の手すりもあるL字型手すりが望ましいと思います。





 それじゃ~また