『井上一馬著 「試行錯誤の文章教室」』から作家の「この一文」紹介の3回目です。優れた作家のキラッと光る一文をお楽しみください(☆は私の感想です)







試行錯誤の文章教室―書き方・読み方・訳し方 (新潮選書)



  • 作者: 井上 一馬

  • 出版社/メーカー: 新潮社

  • 発売日: 1997/04

  • メディア: 単行本







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科学者にとって一番大切なのは何をやるかです。


 


ノーベル生理学 医学賞を受賞した利根川進氏と立花隆氏との対談本「精神と物質」




 


 





精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか



  • 作者: 立花 隆

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋

  • 発売日: 1990/06

  • メディア: ハードカバー





 




結局、何が本当に重要なのかを、十分見極めないうちに研究を始めちゃうんですね。これはちょっと面白いなというぐらいで研究テーマを選んでしまう。それじゃダメなんです。




科学の世界というのは広大ですからね。その程度のことでテーマを選んだら、やることはいくらでもある。それで実験をし、論文を書き、それを学会や専門誌で発表し、 というようなことをやっていればなんとなく自分もサイエンティストになったような気がしてくるかもしれないけど、その程度ではどうでもいいサイエンティストにしかなれない。




だから僕は学生に「なるべく研究をやるな」と言っている。「何をやるか」より、「何をやらないか」が大切だとよく言っている。




だってそうでしょう、一人の学者の一生の研究時間なんてごく限られている。研究テーマなんてごまんとある。ちょっと面白いなという程度でテーマを選んでいたら本当に大切なことをやる暇がないうちに一緒に終わってしまうんですよ。 だから、自分はこれが本当に重要なことだと思う。これなら一生続けても悔いはないと思うことが見つかるまで研究を始めるの始めるなと言っているんです。




科学者にとって一番大切なのは何をやるかです。何をやるかというアイデアです。




そして何をやるかを決めるのは、何を重要と思うかです。 若い時に本当に大切なのは、この本当に重要なものを重要と判断できるジャッジメント能力を身につけることなんですね 。




若い時にそれを身につけなかった人が多いからどうでもいいことをやっているのに、自分では何か重要なことをやってるつもりで一生終わるサイエンティストが多わけです。


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☆これは職業選択にも言えることです。しかしやっているうちに、道を見つけることもあります。やらないで頭の中でぐちゃぐちゃ考えるだけではダメな場合もあります。


しかしどんな仕事をするかは、毎日の仕事をうまくやることよりも重要です。


 




 




それじゃ~また