その後我が病室には、患者の入れ替わりがあり、トラ男さんも時々病室からいなくなり、病院からも脱走していました。
そして周りのみんなは相変わらず迷惑かけられ怒っていました。

ただ私とトラ男さんにはある共通項がありました。トラ男さんはあだ名の通り熱狂的な阪神タイガースファン。ベッドにはトラのバスタオルです。
一方、私も小学3年から40年来のファンで、甲子園球場へは自転車で行ける所に住んでいますし、鳴尾浜の阪神タイガースの2軍の練習や試合を見るのが何より好きな程なのです。

テレビでナイター観戦が始まります。トラ男さんは「う~!」「あ~!」と叫び、私は「ボケ!」、「アホ!」と互いにテレビに向かって叫びあっていました。でも毎日同じ野球シーンを見て叫び声をあげる中で「トラ男さんて、意外に温かい人なんやなあ~」と私は思い始めました。味方がエラーしたり打たれたりすると私の場合は「ボケ!」「アホ!」なのですが、トラ男さんは残念そうな唸り声なのです。
同じ阪神ファンとして、選手に対する愛情の様なものを感じるのです。私は少しづつトラ男さんと笑顔を交わすようになりました。言葉でのコミュニケーションは取れなくても吠えあって共鳴し、共感しあえたのです。
それからトラ男さんは、リハビリが終わった後など、私のベットまで来て、満面の笑みを浮かべながら缶コーヒーをプレゼントしてくれるようになったのです。
 
       つづく
 


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