あけましておめでとうございます。


 


毎年、元旦に好きな本を紹介し、我が身をいさめ、決意を新たにしています。


 


二年前は「長流の畔(宮本輝著)」、前年は「無能の人(つげ義春著)」でした。今年は「夫・車谷長吉(高橋順子著)」です。


 


 


 


 


私は、出会いから結婚するまでの章を読んで、涙が出て仕方なかったです。


40歳半ばで初めて出会い、その後50才近くになって結婚した二人。私小説を書いていた車谷長吉と、詩人である高橋順子の遅い出会い。


 


男と女が出会い、夫婦になることで、創造される物があるのです。そんな出会から夫婦になって生活し、死別までのお話です。





夫・車谷長吉



  • 作者: 高橋 順子

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋

  • 発売日: 2017/05/12

  • メディア: 単行本






 


車谷長吉氏は、自身の初めての本が出版されたら、筆を折り出家するつもりだった。その前に絵手紙を11通、詩人高橋順子さんに送っていた。返事は来なかった。以下本より抜粋いたします。


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私(高橋順子)は 長吉に手紙を書いた   「この後におよんであなたのことを好きになってしまいました」と。



「もしこなな男でよければ 、どうかこの世のみちづれにして下され。お願いします」そう返事して長吉は出家を断念した。


 

名月や石を蹴り蹴りあの世まで  長吉


 

入籍した。これから何年一緒に暮らせるかわからないが、 私は長吉を見届けるつもりだった。


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結婚後に、車谷長吉氏を代表する名作「赤目四十八滝心中未遂」が生まれたのでです。





赤目四十八瀧心中未遂



  • 作者: 車谷 長吉

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋

  • 発売日: 2001/02/01

  • メディア: 文庫










長吉氏が神経を病んでいた時期、四国巡礼に出た二人です。





男と女が出会い、夫婦となって長く暮らしていく幸せ。貧乏や病気などいろいろあっても離れない。別にときめきが無くなったていいんです。家族なのだから。



昨年の入院中、90歳を超えた男性が隣のベッドで寝ていて、90歳近い奥さんが毎日見舞いに来る。耳が遠いため大声で怒鳴りあっているようでもあるのですが、直ぐに声を揃えて笑ってもいる。何日も一緒の部屋にいるとしみじみ「いいなあ~」と思えてくるのです。恋愛などという熱は一時的なものでいいのです。



それじゃ~また。