最後の恋唄



 


貧しく

悲しい暮らしの中で

真っ直ぐ咲いた

蓮の花 一輪

私、そんな人を

一人知っています 

 


■最後の恋


 


初めて出会った頃 


もう二人とも 


ヘトヘトに疲れ果てていたから


二人で暮らすしか


他なかったのだ


 


 


■段ボール箱の上で 


 


段ボール箱の上で


何日も晩飯を食った


幸い


そんな時を一緒に


過ごしてきたのだ


 


 


 


 ■妻からの手紙


突然脳卒中で倒れた


急性期の病室


生まれて初めて


妻から手紙をもらった


「私は頑張る」と


 

■魔法の瓶


 


脳卒中でおしっこが出ない 


尿瓶を差し出されても、 


トイレに連れて行ってもらっても出ない 


女房が尿瓶をさしだすと 


気持ちよく、放尿


 


 


■色々あったけど 


 

二人とも恵まれた生い立ちじゃない


その上に様々な出来事があった

失業や震災や病気

でも

二人でいると笑っていた


■妻の落書き 


 


元旦、私のノートの隅に書かれた 


妻の初落書き 


あれから今日まで、 


そして後何年 


一緒にいられるかなあ