◆それは、日本三名山の霊峰、白山の麓のホテルでの出来事だった。私と妻は観光のためこの地を車で訪れていた。30代の初めだった。




◆夕食時、レストランで隣りに座った初老の男性と、偶然言葉を交わし、思いがけず話が弾んだ。




その男性は、一人車で日本中を旅しているということだった。当時私には、車一人旅の初老の男性は珍しく、訪れた各地の話を、興味深く聞いた。


 


◆話の終盤になって、今まで行った中で一番良かったのはどこですかと尋ねた。




「東北の三陸リアス式海岸です」と即答された。そして素晴らしい所だから、一度行ってみてくださいと強く勧められたのだ。




 








 


 




◆翌朝、彼の多少くたびれたワンボックスカーを見送りながら、60歳になったら仕事を引退しキャンピングカーで、その東北のリアス式海岸を回ってみようと妻と語り合った。




◆それから20年、54歳で脳卒中で倒れ、重い片麻痺障害が残った。翌年には未曾有の東日本大震災。これでもうその話は完全に諦めた。


 


残念だけれど夢は叶わなかったのだ。


 


 


それじゃ~続きはまた




 







【同病の三本松のおじさんの一言】

旅先は人の情けが身に沁みると同時に、日常に沈殿していた素直な思いがふっと噴き出してくることがありますよね。心の開放から素の自分に戻るみたいな、これも旅の楽しさでもあるのですね。


【返信】

不思議な啓示が舞い下りてくることがあります。日常を離れどこかで回路がつながるからでしょうか?!




 



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