私の町は、大阪、神戸、京都の大都市へはそれぞれ車で1時間半程度で、わりと便利な場所にあると思うのですが、子供の数は減り続け、高齢化がどんどん進んでいます。


我が自治会では自治会所有の山林があります。木材価格の低迷で、もうお荷物になりつつあるのですが、管理はしておく必要があります。



私は脳卒中で片麻痺となって、故郷であるこの村に戻ってきました。そして自主リハビリで家の周りを杖をついてよろよろ歩いていました。


そんな私の姿を目ざとく見つけた近所のおばさんが、さっそく女房に申し入れてきました。


「歩けるんやったら、自治会の役員をしてください。山林の役くらいやったらできるでしょう」山林の役員は山林を管理するため「山に登る」必要があります。ハイキングするような山道などありません。一歩間違えば大けがにつながるような険しい道なき道です。その方は自分がその役をできるだけ早く辞めたいと、私に白羽の矢を立てたのです。


私は次の日その家まで行きました。幸い旦那が家の前にいました。

ズボンのすそをまくって「この足見てくれるか!装具をして、杖ついて今何とか歩いとるんや!どうやってこれで山に登れるんや。奥さんによく言っといてくれ!」と多少吠えておきました。この人の奥さん、近所で有名な「損したくない。少しでも得したい」人なのです。逆に「得している人」が許せないのです。私は病気をいいことに自治会の役員もしていない「得している人」なのです。


漫画家の西原理恵子さんは「この世で一番大切なお金の話」の中の「なにが人を人でなしにするか」の章で次のように述べておられます。

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■「損をしたくない」ってことばかり考えていると人ってずるくなるんだ。ささいなきっかけでどんどん卑しい行為に結びつく。


■人より少しでも得しようと思うから「だったらズルしちゃえ」ていう気持ちが出てしまう。

 





この世でいちばん大事な「カネ」の話 (角川文庫)



  • 作者: 西原 理恵子

  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)

  • 発売日: 2011/06/23

  • メディア: 文庫







 

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要するに「貧すれば鈍する」なんですが、子供たちも家を出て行ってしまい、自分たちは高齢化して体力的にきつくなって来ている。兼業農家で金銭的な余裕もない。この様な人たちが我が地域で増えてきたのです。


男達は、まだのほほんとしていますが、女房達は必死です。ですがその顔に「ひたむきさ」でなく「卑しさ」が出ているのです。要は「損をしたくない」必死さなのでしょう。こんな山間部ののどかな町にもこんな人が多くなってきたのです。まことに残念!

 

それにしても、田舎暮らしも身体障害者が生きていくにはつらい面があります。草刈り等体を使った協働作業が多くあり、老女達は「男は力仕事ができて当然や!それもできん者は役立たずや!」との思いがあり、今だに、頭脳労働に価値など大して見出さない、体使って働いてなんぼの世界です。私は、親の介護が済めば、阪神タイガースの地元に戻りたい、と思うことがあります。

 

  それじゃ~また