◆リハビリ医のはるか彼方先生と私が話していると、たまたま通りかかった人が先生に話しかけました。「おふたりとも私の患者さんです」と紹介されたこの人、後にわかるのですがとんでもない「つきまとい男」でした。


 


◆この人左右の手足ともぴんぴんで、軽やかに階段の上り下りしています。脳梗塞ですと言われても最初まったくぴんと来ませんでした。


 


ただ、少し話すと、この人すぐ泣き出すのです。典型的な感情障害の症状です。それで、やはり私と同じ脳卒中かなと少し納得しました。発病後1ヶ月ですが、もういつ退院してもいいとはるか先生からの許可はでているのです。


 


◆それで話すようになったのですが、すぐに車の運転について教えてほしいので部屋を訪ねてもいいかと言ってきました。私は同室者の退院が相次ぎその時たまたまひとりぼっち部屋になっていたので、気楽に承諾しました。


 


この人、計算ができない。ものをすぐ忘れる等ひどく気にして落ち込んでいるのです。「そんなもん…なんぼのもんじゃい!」と思いましたが、私と違い右麻痺の高次脳機能障害ですので、口に出すことができませんでした。


 


すると次の日の夜は夫婦で話が聞きたいと言います。私の経験も少しは役立つかなとこれも承諾しました。


 


夕食のあと面会時間が終わるまでの1時間程度話しましたが、優しそうな奥さんでした。


 


◆驚いたのは次の朝です。朝食が終わってすぐこの人私の部屋へ現れたのです。昨夜奥さんを交えゆっくり話し合ったその翌朝です。これ以上何を話すのか??


 


それからです私のリハビリが終わるのを毎日待っている。私はいつもリハビリ室が閉まる直前までリハビリを続けるのですが、それを待っているのです。


 


◆2~3日を経てわたしの病室にも新たな入院患者がありました「もう部屋で話すことは他の方の迷惑になるのでできません」と伝えました。


 


すると今度は「部屋の外で話しましょう」などといってくるのです。私は今日は疲れているなどと適当な理由を付けて断っていました。


 


そうするとリハビリしている私の側に来て「メガネさんと、話しできないなら入院していても仕方ない」などと情けない顔をするのです。あれこれ考えて夜もなかなか眠れないようでした。


 


◆もう先生の許可も出ているのだから退院されたらどうですか。ここで悶々とした日々を過ごしていたら別の病気になりますよ!!


 


たとえここで24時間他人と喋っていても自信はよみがえらないですよ。それより早く日常生活に戻って、できることを確認しながら自信を取り戻す方が良いのではないですか。体はこれだけ動くのですから、他人に頼っていちゃダメですよ。


 


わたしのアドバイスが効いたかどうか翌日の午前中に奥さんとともに退院されて行かれました。私の付きまとわれも無事終了しました。


 


◆このことが気になり、後で色々調べていくと「脳血管性うつ病」という疾患に行きつきました。


 


幸いテレビの放送大学でこの疾患に関しての講座がありましたので、その内容を当ブログでもお届けしています。


 


     それじゃまた。