片麻痺となって、最も苦手なことが、「早く、早く」と急がされることである。




あせると途端に体がこわばり、いっそう動かなくなる。だから何事に対しても早め早めと余裕を持って行動している。




私はプール歩行のリハビリに、交代で二人の男性ヘルパーについてもらっている。一人は私と同年代のベテランヘルパーもう一人は30代の若いヘルパーである。




午後2時開始なのであるが、私は30分前にはロッカーに入って着替えて準備運動をして10分前にはプールの前で待っている。




しかし、ヘルパーが来られるのは2時ギリギリである。「こんにちは」と挨拶されてから着替えられるので、プールに入るのは当然2時を過ぎてしまう。




同じことを私がすれば、2時を15分は過ぎてしまうだろう。そうなると口癖のように「忙しい」と言っているヘルパーの次の予定が遅れてしまう。そう思って我慢していつも待つようにしていた。




ところが若い方のヘルパーが来るのが、2時を過ぎてしまうことが何回か続いた。ついに、自分一人でプールに入ることにした。幸い、気を付けてゆっくり歩けば、自分でも歩行プールに入ることができた。




プールを1周したころ、バツの悪そうな顔をしてやってきた。「もう今日はいいわ、自分一人で歩くでから」と言っても帰ろうとしない。




プールが終わった後、「どうして、いつもそんなに遅くなるのだ」とたずねると「ベテランのヘルパーさんからギリギリ行けばいい(待たせておけばいい)。早く行くと気を使わせるから」と言われていますという驚くべき返事だった。私は忙しいからギリギリになるんだと思っていたのだ。




「障害者はえらく軽んじられてるなあ~」と彼に言うと、「私もそう思います。実は私の妹も障害者なのです」というではないか、 彼がこの業界に転職したのも妹のことがあったのかもしれない。その彼がこんな認識なのだ。






私は、これを機に、2年間続いたヘルプを断ることにした。




ベテランヘルパーは一転、ひどく気にして私だけでなく旧知の私のケアマネージャーにまで考え直すよう翻意の連絡を入れていた。




私は自分の考えを変えるつもりはない時に、その理由を親切に教えたりしない。理由を言えば、相手にも言い分が生まれ、恨みを買う場合も出てくる。





それにしてもだ、私が出会った介護業界の人々の感覚は、自営業で必死で営業していた私には全く理解できない。




少しのミスで長年の信頼を一瞬で失く、仕事が無くなる。そんな緊張感が全くないのだ。自己中心的で、「低賃金を我慢して、やってやってるんだ」という意識である。




一方、私自身もヘルパーに依存し過ぎていたかもしれないと反省した。





それじゃ~また