(7)年老いて、男は言葉を失う。無駄話ができる男は貴重である。 [障害者として生きる]
今回は、特別講師として、私の敬愛する絵本作家の「佐野洋子」さんにご登場いただきます。
ヨーコさんの”言葉”第27話「カラオケセットと井戸端会議」NHKから抜粋してお届けします。これは、お母さんの7回忌に親せきが集まった時のお話です。
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男たちはカラオケセットに飛びつく。お話というのがない。しかも誰も他人の歌は聞いていない。女たちは、もう何でもペチャクチャしゃべって、おこったり笑ったりしている。
そのうち男たちは泥酔して眠ってしまう。
ふとんに入っても女たちはナイショ話を延々としている。もう口がふさがっているってことがない。
翌朝、男の集まっている部屋を覗いてみると一人ひとりが新聞1枚ずつ持ってじっと見ている。私前に見た老人ホーム思い出した。
女はぼけても喋っている。全然通じ合わないのに話をしている。
しかし、じいさんは石のように一人ずつぽつねんと座って一点を凝視している。無表情というのは凄惨である。
男は仕事の話はいくらでもする。共通の目的に向かって言葉を伝達手段として行使している。しかし年老いて自分の役割が終わると男達の言語も終わるのである。
定年になった男が女に疎ましがられるのは言葉を失うからである。
男もくだらない世間話でも、家庭の事情でも心を割ってお話した方が良いのではないか。
他者との関係をもっと地をさらけだして恥を捨てて言葉によって持った方が良いと、私は思うのよ。
じいさんばあさんになってから人生の三分の一があるかもしれないのである。だからくだらない無駄話ができる男は貴重である。
終わり。
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片麻痺障害で、言語の障害が軽い場合は、本当に感謝しなければなりません。感謝して無駄話ができるように努めましょう。
私も病後7年たって、散歩の途中で出会う人とようやく無駄話ができるようになってきました。それでもまだ意識しないと無駄話しようとしない。老い方修業はまだまだ続きます。
ただ佐野先生に一言申し上げたいことがあります。私が回復期入院していた病院には老健が併設されていました。午後、老健に入院している方々がリハビリ室にやってくるのですが、そこでの女性たちの会話は、毎度毎度、自慢話、噂話、悪口のオンパレード。 ホンマに聞き苦しい物で、私もさすがに彼女たちに話しかけようとは思わなかった。私昔からこの手の話が大嫌いです。男性もこんな世間話ならしない方がましです。
では、我々片麻痺障害者で失語症の方の場合はどうすればいいのか、という大きな問題が残ります。この問題に関しまして正直、私はよく分かりません。そこで次回以降言語聴覚士の「関啓子」さんを、ゲストスピーカーにお招きし、お知恵をお借りしたいと思います。
それじゃ~また。
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