傷ついた時の脆さは他から学ばない人間の特徴(「冬の華」乙川優三郎著) [お勧め本]
牡丹蜂文様蒔絵鼈甲櫛_巨満遠舟作 [ 江戸後期 ]
乙川優三郎著「冬の華」は、棟上げ中に落下し下半身の自由を失って久しい大工の芳蔵と治療する医者の文礼の話で、今回第2回目です。
もともと自分の人格を過信し、挫折を大きくとらえてしまう質であったから、今の病難は彼の受容力を超えているのかもしれない。傷ついた時の脆さは他から学ばない人間の特徴で、自分の苦しみに勝るものはないから、家族の苦しみも生活の躓(つまず)きも発奮する動機にはならない。
結果として周囲の苦労には目をつむり、成り行きに任せに生きていながら、不運を嘆くことは忘れない。ひとりの殻に閉じこもり、いたずらに苦しみ、無為の日々を重ね続ける。
無知を自覚するところから人は大きく成長するが、気づかせるのは至難であった。
この芳蔵に、文礼は妻が江戸から持ち帰った雪花文(雪の結晶の意匠)の蒔絵櫛を見せようとするところで物語は終わります。
「いくら器用でも大工が蒔絵師になれるでしょうか」懐疑的な弟子に対して、文礼には密かな自信があった。
希望をつないでこの物語は終わります。
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◆◆ホテルマン出身の作家
といえば、森村誠一さんが有名ですが、乙川雄三郎さんもホテルマン出身の作家です。共通するのは、やはり人に対する鋭い観察眼でしょう。 今回取り上げた「冬の華」にはモデルがいる気がします。半身不随という重い障害を抱えた人を乙川さんは身近で知っておられるのでは。単なる想像の世界ではないから、ここまで深く心情が捉えられたと思います
タグ:精神・魂
2017-01-27 01:00
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